2008年より、慶應義塾大学SFC研究所(見える化・ラボ)は、株式会社乃村工藝社、長崎歴史文化博物館とともに、「集客施設サービス改善コンソーシアム」として「文化・観光施設におけるサービス生産性向上プロジェクト」を推進してきました。このプロジェクトは、日本経済の7割を占めるサービス産業の生産性向上を目的とするサービス産業生産性協議会が、経済産業省からの委託により実施する「平成20年度サービス産業生産性向上支援調査事業(サービスプロセス改善事例開発分野)」ならびに「平成21年度サービスイノベーションを通じた生産性向上に関する支援事業」に採択されました。これらの事業では、観光振興、地域活性化、まちづくり、生涯学習などにおいて重要な役割を担う「文化・観光施設」のサービス生産性向上に向けて、顧客起点で、課題や資源の「見える化」を行い、業務の改善をし続ける、サービス生産性向上の全体モデルと手法を明らかにする取組みを推進してきました。
このたび、その成果と実績を踏まえて同コンソーシアムを発展的に改組し、SFC研究コンソーシアムにおける研究プロジェクトとして「場づくりマーケティング・コンソーシアム」を発足しました。
「場」とは、多様な当事者が集まり、直接的なコミュニケーションが行われる時空間であると同時に、価値を共創し増幅させるプラットフォームを意味します。例えば、博物館やミュージアム、スタジアムでは、魅力的な「ハードウェア(施設・展示)」があるだけではなく、そこに多様な当事者が集い、相互のやりとりや関係づくりが促進されるような「価値共創のデザイン」がなされることで、「場」として機能し、価値が増幅され、結果としてそれぞれに高い満足や目的の達成を実現することになります。
こういった「場」を創ることをマーケティング戦略として取り組むこと(=場づくりマーケティング)は、企業・組織・地域における経営戦略の1つの重要な切り口となる潜在力を持ちあわせています。実際、企業や商品のブランド価値の向上や、従業員や顧客への企業理念の浸透、顧客の満足度やロイヤリティの向上、企業の社会的責任などの目的で、企業のコミュニケーション施設として、企業ミュージアムやショールーム、サテライトショップ、展示スペースなど、様々な形態の「場」を設けることが行われています。また、地域を経営するという観点に立ったときにも同様に、自治体・地域団体・企業等による「場づくりマーケティング」が重要になります。まちづくりや地域活性化等を推進するとき、地域の魅力や価値を再認識でき、共創活動ができる「場」の存在が大切な役割を果たすことになります。
こういった「場づくりマーケティング」の観点のもと、このコンソーシアムでは、特に、自治体や地域団体が都市や地域の魅力や価値を高めるインフラとしての「場」をつくることや、企業が社会との価値共創や生活者とのコミュニケーション活動を行う「場」をつくることに着目をし、大学・企業・文化観光施設等が協働で、その理論構築やモデルの検討、手法やツールの研究開発、先導事例の調査研究、情報発信・普及活動などに取り組んでいます。
活動内容(2016年度)
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企業・自治体・地域・生活者等による「価値共創型の場づくり」実践事例の調査・研究
各地で展開されている先駆的な実践事例について、概念構築を行った上で、コンソーシアムのネットワークを活かして、企業と大学で共同での調査研究を推進し、地方創生における場の活用や、地域における価値共創型のビジネスモデルなどに関する知見を得ることに取り組みます。また、次年度以降に行う、研究成果の発信や普及の準備を推進することや、そのプロセスを通じた人材育成等の活動にも取り組みます。 -
「場づくりマーケティング」に関わるツールの研究・開発
自治体や企業等と協働でツール開発の推進や実践支援などを行います。